香水はざっくり分けると、「植物系香料」・「動物系香料」の二つに分かれます。
ムスクとは、動物系香料4種と呼ばれるもののうちの1種。
動物系香料を知るうえで重要なのは、動物系香料というものが動物の内臓や、肛門近くの分泌液、体内に滞留しているものなどから着想を得ている香りという事と、もともとはそういうものから採取されていたという事です。
ムスクとは、ジャコウジカの雄の腹部の香のう(ジャコウ線)と呼ばれる分泌液からとれるものです。
しかし、ジャコウジカとはどんな動物なのか...。果たしてシカなのか...。どうやって採取するのか...。わからないことだらけですよね。
みなさんがムスクの香りを想像したときに、いい香りはしそうですか?
香りについて話すとき、香りが目に見えない中でいかにお互いが共通認識を持ちながら会話をしていくのかが、最も難しいです。特にムスクは、とても難しいです。
昔から、ムスクにはフェロモン効果があると言われていました。いくつもの逸話がありますが、どれも似たようなお話です。
例えば、「ある時代のある国にいた絶世の美女と謳われたお姫様は、ムスクの香りを身体に纏い、世の男性を魅了していた」など。この逸話からわかるように、ムスク=フェロモン系の何か。というようなざっくりとした概念は、すでに世の中にはあるという事です。
ですが、ムスク単体で嗅いだ時、どのような香りがするのかは、結構知られていません。
ワシントン条約により、動物などの乱獲はやめようと世界的にルールが出来ました。それにより、動物系香料というのは採取できなくなる。それ以降は全て、合成香料となりました。
ムスク・アンバーってこういう香りだよね。というのを調香師の方々が人工物で調香して作成しています。
今はすべて合成香料になっているので、「香りの実態は誰も知りません。」ここが少し面白いですね。
この写真を見て美味しそうだと思いますか?
これは調理前のフォアグラです。皆さんはフォアグラを食べたことがありますか?
結局ムスクとはどのような香りなのか、ムスクをフォアグラに例えて説明します。
調理前のフォアグラ単体で、何か甘みがあったり、塩っけはないですよね。
フォアグラというものは基本的に、フォアグラがあり、それをソテーする。そしてソースがあり、そのソースとフォアグラを一緒に口に運ぶと、フォアグラがソースの奥行きを官能的に広げていく。これがフォアグラです。要は、何かと一緒になったときにそのパートナーの持っている個性にしとーってしたような奥行きと柔らかい広がりをもたらしてくれるのが、ムスクであり動物性香料です。
まとめると、なにかと一緒になった時に、奥行き柔らかい広がり、表情を見せてくれるのが動物系香料であり、「ムスク」ということです。
そして、ムスクを入れることによって残香性、香りの広がりが生まれます。それがまた、人の体臭と良いマリアージュであったりそういうものを生み、フェロモンのようになっていくのでしょう。
是非みなさんも、ムスクを使った香水を身に纏い、香りの奥ゆかしさを堪能してみてはいかがでしょうか。