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元エルメスの調香師ジャン・クロード・エレナが設立した「ザ ディファレント カンパニー」CEOに訊く、香水のクリエイション

2017.10.05

Scentpedia編集部
妻でPRマネージャーを務めるソフィー・ガブリエル氏(写真左)と、CEOのルック・ガブリエル氏(写真右)

先日、「ザ ディファレント カンパニー(The Different Company)」の新作発表会に伴い来日した、CEO ルック・ガブリエル氏のインタビュー。母親がフランスで高級香水店を営んでおり、幼い頃から香りの世界に導かれ、訓練を受けた彼は、元々エルメスの専属調香師 ジャン・クロード・エレナが2000年に創立した「ザ ディファレント カンパニー」を2004年に受け継ぎ、ボトルデザインを手掛ける ティエリー・ドゥ・バシュマコフと、トップレベルの調香師らと共に同ブランドの妥協しないラグジュアリー精神を守り続けている。彼らのクリエイション、ブランドとしてのエスプリに迫る。

−フランスと日本では人気の香りの違いはあるか

ルック・ガブリエル氏(以下ルック):本当に素敵な香りと、成功している香りというのがある。不思議なことに、スブリームバルキスとピュアイヴのトップ2の香りは、どこにいっても人気の香りで、発売当初からロシアでも日本でもフランスでも、1位、2位に入っている。他のブランドでも、アニック グタールの「オーダドリアン」、ラルチザン パフューム「ミュール エ ムスク」、バイレード「ボードレール」らも同じ現象が起きているように。技術的にどう作られているとか、好きとか嫌いとかの問題ではなく、客観的に指摘出来る理由ではなく、不思議だけどね。

 

−国外では、どこに最初展開をしたか。

ルック:イギリスのリバティ、アメリカのバーニーズから展開を開始したよ。

 

−2008年、日本に展開を始めた理由は。

ルック:当時は日本のことをよく知らず、遠い国という存在だったけど、日本に対して、装飾的ではなく、上品で控えめなイメージがあった。それでいて日本独自のスタイルは長年守られていて、目的がある生活様式ではないかと感じていた。私たちのブランドも、控えめでありながら、主張のあるフレグランスを製作している。合うのではないかと思った。

 

−実際に展開してみてどうだったか。

ルック:皆が日本市場は小さいと言うけど、私は伸びる可能性があると思っている。ロシアや中国のマーケットでは、我々のブランドにとても興味を示してくれるし、マーケットも大きい。それに比べて日本は、もっと啓蒙して行く必要があるし、知識を得たり、教育していく時間が必要だと思う。そうしてブランドと消費者の間の関係が築いていけば、市場は拡大していくと思う。我々のブランドはまだ17年しか経っていないけど、先は長い。そういったことを手助けできればと考えている。

 

−フレグランスを通して伝えたい、ブランドとしてのメッセージは。

ルック:ハイエンドなフレグランスというのは、美術館やコンサートホールにいく必要がない、身につけて持ち運べるアート作品だということ。人々の生活の質を高め、すばらしい香りと寄り添うことで、豊かになるということを伝えたい。

 

−様々な調香師を迎えているが、どのように調香師を選ぶのか。

ルック:まずはパーソナリティー。作りたい香りに適した調香師を選ぶ。さらに「マスターパフューマー」としての高い技術力が求められる。それから、香りは言葉で表現するのが難しい。調香師と自分の中でコミュニケーションが、同じ言葉で、同じ表現でとれるかどうかの3つを基準にしている。

 

−思ったような香りを製作できずに、途中でやめてしまうこともあるのか。

ルック:あるよ。2年ずっとバニラのフレグランスを作ろうとしたけど、思ったようにできずに辞めたこともあった。一度その調香師と合わないとなると、もう離婚したかのように、その調香師とは仕事をしなくなるんだ。

 

−今回の新作「マジャイナシン」はどれくらいの期間で作られたか。

ルック:6ヶ月というとても短い期間だったよ。それに対して「アイ ミス ヴァイオレット(調香師:ベルトラン・ドゥシュフール)」は80回やり直しを重ねて4年かかったりもする。

 

−途中でやめてしまうこともあるなかで、「アイ ミス ヴァイオレット」のように何回繰り返して年月を重ねても、諦めなかったフレグランスがある。クリエイションするなかで、何らかの確信があって進めているのか。

ルック:難しい質問だ。感覚が全てだから。自分がいいとか悪いとかって、他の人にわかるものではないと思う。バランスが悪いものは辞めたり、直したり、改善していく過程で、できるんじゃないかというフィーリングがある。料理みたいに、味見したり、試行錯誤して完成させていくのに近いのではないかと思うね。

 

−いつも香りを最終決定するのは誰か。

ルック:最終的には僕と調香師が決めている。もちろん途中でオフィスの人や周りのひとに聞くけど、最終的には僕が決めることが多い。香水は自分の為に作るわけではなく、ブランドとして作る。客観的な意見として、周りに聞いたりするけれども、やっぱり最後は僕が決定することになるね。

 

−試行錯誤をしていく上で、製品にする決め手は。

ルック:言葉にするのは難しいけど、バランスがすべてを決める。フィーリングで感じるものがあって、技術的にどうというのではなく、自分の感覚に従っている。日本の工芸も、自分の手で感じるフィーリングがあるように。

 

−フレグランスに携わるなかで一番幸せを感じることは?

ルック:やっぱり「ザ ディファレント カンパニー」の香水の香りを嗅いだときに、興奮するくらい、夢中になってくれている姿を見るのが一番嬉しい。

「ザ ディファレント カンパニー」公式サイトhttp://europe.thedifferentcompany.com/index.cfm

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