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COLUMN

香りの旅 vol.Ⅰ ー 香りにまつわる世界の歴史を紐解く ー

2023.03.21

Scentpedia編集部
世界の歴史を「香り」という観点から紐解いてみる

世界の国々の歴史を「香り」という観点から紐解いてみると、人間の生活と香り文化との深い結びつきが、まるで壮大なストーリーのようで、はたまた香りの辿ってきた遙かなる旅のようで、とても興味深い内容だったので、ご紹介したいと思います!


人間の祖先と「香料」の始まり

人間の祖先を含む生物は、様々なものが発する「匂い」を、身の安全を見極めるため・生活をより豊かにするために利用しました。
そのうちに、人間の祖先が花や果実などから匂いを取り出すことを試み始めました。これが、香料の始まりです。

「パフューム」の語源

「Perfume(パフューム)」の語源は、約5,000年前、ラテン語のPer Fumum です。
意味は、”煙を通じて” 英語表記では through smokeです。

紀元前3,000年前に火が発見されてから、神に捧げる「メソポタミア レバノンセダー」として、月桂樹(ローレル)・甘草・ハスなどが香薫に使用されるようになりました。

古代エジプト:「薫香と香油」

4000年前、司祭は「キフィー」と呼ばれる練香(オリーブ・アーモンド・ゴマ・ピーナッツ・花や草・蜂蜜を調合したもの)を焚いていました。

3500年前、病気の治療薬として「エーベルス・パピルス(オリーブ・アーモンド・ゴマ・ピーナッツ油・香草・蜂蜜を調合したもの)」が用いられるようになりました。

3400年前には、ツタンカーメン王が香油の壺を使用していたことが知られています。
その香油には、ソマリアに遠征隊を派遣し、乳香(オリバナム:特殊な木に傷をつけると独特な香りの汁が出てくる。この樹液は線香のような趣向品としての香りを持ち、邪気を祓うとされ、儀式でも使用された)・没薬(ミルラ:樹枝。死体の酸化防止、防腐剤のように用いられた)・肉系(シナモン)を輸入して用いていました。
また、古代エジプト人のおしゃれとして、ハスの香りの帽子をかぶることが流行していたそうです。

当時のソマリアでは、「乳香」を取るために軍隊・海賊なども巻き込み戦争が繰り広げられていました。

古代ギリシャ:「アロマテラピー」の起こり

3000年前、女神アフロディナが、花やスパイスを蒸留して死者の火葬や呪術の儀式に使い始めました。

この頃ギリシャの西洋医学の祖であるポクラテスが、アロマテラピー(天然の植物香料)の効能を顕しました。

テオフラストが花・葉・根・幹木・果実・樹脂の混合採用にて香料を製造し、『植物誌』が発行されて、香料油やポプリの利用法が伝えられました。

古代ローマ:美食の文化

主力調味料「魚醤」の生臭さを消す為に、香辛料やビネガーが多く採用されていました。

また、人々は、映画「テルマエ・ロマエ」でよく知られるようになった「テルミ」というローマ風呂に1日3回入浴しました。
入浴の際には、固形の香膏(バラ・スイセン・スシノン(香料の混合油)・ユリ・ショウブ・サフラン・シナモン・ミルラと蜂蜜を混ぜたもの)が使用されました。

この頃には、胡椒(肉を美味しく食べるための調味料であるだけでなく魔除けの意味もあった)を奪い合って戦争が起こりました。

東方の香り文化

[古代インド]

王侯貴族が白檀(サンダルウッド)・沈香(香木のアガールウッド)・スパイスを焚いて葬儀の儀式に採用しました。


[中国]

3−6世紀 線香(イノセンス)・白檀(びゃくだん)・沈香(じんこう)や、ペッパーなどのスパイスが仏教の教えと共にインドから伝えられました。


[ベトナム、マレー半島]

5−6世紀 沈香(じんこう)・乳香(オリバナム)・投香(ミルラ)がイスラム教や仏教に伴い伝えられました。


・・・どうでしたか?

所狭しと春の花々が咲き誇り、街を歩けばどこからか沈丁花が香り、桜が景色ををほんのりピンク色に染めてゆくこの頃、マスクを外して深呼吸して、そろそろ旅行にでも行こうかなっと計画されている方も多いのでは。

旅先で出会う異国の香りに、古代から史実に多く刻まれている人間の食文化や宗教や生活と「香り」の織りなす軌跡やストーリーに、ひととき心を馳せてみてはいかがでしょうか。

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