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【インタビュー】レンタルディフューザー 「センティメンタルズ」空間に香りを届けるミッションの先にある想いとは?

2020.07.29

Scentpedia編集部

様々な企業のブランディングやクリエイティブを担う株式会社アナイスカンパニーによる、レンタルディフューザーサービス「 ScENTIMENTALS(センティメンタルズ)」がローンチされた。今回は、アナイスカンパニー代表取締役社長 : 上妻 善弘に開発のきっかけから、空間に香りを届けるミッション、さらにその先にある想いについて深掘りした。

ーこの度はローンチおめでとうございます。

「香りが多方面に与える影響を様々な企業でも体験して欲しい、という思いからこのサービスをスタートさせた」ということでしたが、具体的に、何か上妻さんの体験がきっかけになっていたりするのでしょうか?

上妻 善弘(以下、上妻):僕ももともと香りにすごく興味があったわけではないんですけど、香りのお仕事に携わって約10年が経過しますが、今では自分の気持ちをコントロールしたり、意識を高める上では欠かせない存在です。弊社のクライアントも香りを軸にプロダクトを展開するブランドさんが増えてくる中で、近年の研究で香りには生理的、心理的な効果があることが分かってきており、ヒトの脳の感情や記憶を司る部分にダイレクトに伝わる「香り」によって、色々なパフォーマンスにポジティブな影響を与えられることも感じています。

家にいる時間以外だと、今現在の特殊な時期を除けば、大半の人がオフィスにいる時間が一番長いでしょうから、そこが単純に気持ちいい空間であって欲しいと思っています。気持ちいい空間って曖昧で、空間のインテリアだけで表現するのは難しく、その点香りは一瞬で清潔感を与えたり、シーンの切り替えスイッチのような役割で集中力を高めてくれたり、無意識でいながら影響力が大きいんです。


僕自身も香りが身近にあることでライフスタイルが変わるという経験をしてきているので、今回のプロダクトやサービスを通じて、少しでも多くの人に届けばいいなと思っています。

セントネーションズを始めてようやく8年になりますが、当時は"フレグランス=香水"といった感じで、とても小さなマーケットでした。柔軟剤やヘアスプレーのような香りものが徐々に身近になってきたことで、マーケットが広がっているという実感がありますね。

ー 従来の超音波式や噴霧式のアロマディフューザーと違い、加圧式という方法で香りを拡散させるのが大きな特徴かと思われますが、開発にあたって苦労した点はありますか?

上妻:エアコンプレッサーで空気を圧縮し、加圧によってオイルを供給する加圧式のディフューザーです。オイルの拡散方式には加熱式や水蒸気による拡散などいくつかの種類がありますが、精油はとても繊細で、加熱や水で薄めることで本来の香りが変わってしまったり、効能が薄まってしまうことがあります。ScENTIMENTALSのディフューザーは、コンプレッサーで圧縮した高圧エアによりオイルを常温のまま拡散させる二流体常温拡散技術を採用しています。オイルに熱を加えたり水で薄める必要が無いため、オイル本来の成分を壊すことなくピュアな香りをお楽しみいただけると共に、成分の持つ効能をより発揮しやすい状態で空気中に均等に拡散させます。
これがすごくこだわった部分ではありますね。


ー そのほかに、機能面でこだわった点をお聞かせください。


上妻:スマートフォンのアプリにより、遠隔からディフューザーの稼働状態の確認や、電源のON/OFF設定が可能です。また、オイル残量が少なくなった際のアラート機能も搭載していますし、スタッフや社員が多いことも想定して、一つのアカウントで複数台管理できます。


ー 購入型ではなく固定費にてレンタルサービスという形態をとった理由をお聞かせください。


上妻:結局、"香りと空間の付き合い方"自体がまだ世の中に定着してないので、そういう意味では年間契約のハードルが多少高いと思われがちですが、半年ごとに香りと向き合って、香りを変えるか変えないという選択とか、オプションになりますが、さらに空間を追求していくために独自の香りを開発するなど、インテリアの重要なポジションを担うような、空間に欠かせないものになっていけばいいなと思っています。仕事でも恋愛でも一緒だと思うんですけど、長く付き合っていくことってすごく重要なことだと思うので、僕らとお客様の関係もそうですし、お客様と香りの関係も継続させ育てていくという中長期的な課題をクリアするために、あえてレンタルという選択肢を取っていますね。


ー なるほど。確かに一度購入したきりで置いておくよりも意識的にも定着して行きやすそうですよね。


上妻:そうですね。ある意味、勝手に香りが届いて無意識に香りを設置することがスタンダードになっていく未来を描く上で、こういった意識する過程も必要なのかなと思っています。

ー 現時点で、どのような店舗(場所)に導入されていますか?


上妻:美容室、ホテル、歯科医院、介護施設、それにフィットネスジム。もちろん企業のエントランスや会議室の需要もあります。


ー 介護施設に導入されていくと認知症予防とかにも香りがすごく効果があると言われているので相性が良さそうですね。


上妻:そうですね、海外では香りの脳への刺激が、認知予防に繋がると多くの論文で言われています。アルツハイマー型認知症では、海馬が萎縮し記憶障害を起こすよりも前に嗅神経の機能が低下することもすでにわかっています。 

あとは、内覧に来る方々のファーストインプレッションも、良い香り=清潔なイメージを持っていただけると思います。
介護施設に入る決断をする過程はきっと様々です。もちろんポジティブじゃない方も中にはいるでしょうから、いい香りで少しでも心がポジティブになっていただけたらいいなと思っています。


ー 香りが10種類と豊富なラインナップですが、開発当初からこのラインナップ数で展開を考えていたのでしょうか?


上妻:最終的にはもっと多くの香りを提供したいと考えています。ただ、たくさんの人が行き交う空間を想定した場合、なるべく多くの合格点を得るためには、(香りとの付き合いに慣れるまでの期間は特に)少数派でも好まないとされる香りをできる限り排除する必要があります。今まで30ブランド以上の香りのプロデュースをしてきた知見から、比較的広く好まれる香りを選択しています。

僕らは一般に香りをもっともっと普及させたいわけですから、ここで個性を押し付けたり、尖りすぎる必要はないと考えています。
機械で香りの強弱の調整もできますし、これから徐々にラインナップも増やしたり、コラボレーションによる限定的な香りを提供したりなども考えていきたいです。

香りを様々な空間に届けていく。これが今回のミッションですが、その先には香りを好きになった方々が香水を使うことが日常的になったり、香りの世界がこれまで以上に広がるための一役を担えたら良いですね。
最近は香りをキーにしたプロダクトやサービスを展開するプレイヤーが増えてきましたが、とても良いことだと思っています。
香りが単なるファッションアイテムではなく、エチケットとして世に定着することができるかどうかは、僕の中ではすごく大きなテーマです。

ー 決定の際には使用シーンや効果から先に決めてから、当てはまる香りをイメージしていったのでしょうか?


上妻:使用シーンはもちろん想起しながらも、あまり精油の機能ばかりにとらわれることなく、上質な良い香りを届けるということを最優先にしています。上質な良い香りの創出こそ、他社との差別化であり、香りのプロが提案するアロマディフューザーですからね。

今回の10種である程度幅広いお客様にご満足いただけるはずということは、自負しています。 

ー 使用する場所の広さによって2種類のタイプが選べますが、全体のデザインはどのようなコンセプトで進めていったのですか?


上妻:日常的に使うのは、ベーシックタイプ(AP001)になります。どちらも個性を出しすぎないもの、どんな空間の邪魔にならないもの、にしたいと考えていましたが、特に大きいタイプ(AP005)は、業務用の機械のように見えないようデザインに気を配りました。



AP005は、例えば商業施設やホテルの天高が高いところとか、イベントやファッションショーとかそういうことを想起して、天高も含めた比較的広い場所を意識しています。
新しい香りの楽しみ方を提案するきっかけを作りたいという目的もあり、非効率ですがあえてAP005も作りました。
ウォーターサーバーと一緒です。シンプルでありながら長く使って貰うということを大前提におしゃれな空間に置いても違和感ないものである必要があります。

ー 自粛やテレワークでホームフレグランス需要も高まっていますよね。ウェルビーイングという観点で今後も香りに関わる商品開発は考えていますか?


上妻:常に考えています。例えば車の中は限られたスペースで、一人の時間を楽しむことができる場所であり、家族で楽しむ場所でもあるし、そういう空間に対してどういうアプローチで幸せな時間を提供できるかはもちろん考えます。

子供と大人が一緒に楽しめる香りの研究なんかもそうです。
その先に何かしたらの幸せがあればと思います。

僕らは常にゼロイチだけを作りたい訳ではないんです。短期的にというよりかは中長期的に、本当に必要とされる場所に対して、どういうアプローチで、どのような香りを提供できるかを常に考えています。それをストーリーと一緒に届けられれば良いなというのはいつも思っています。


ー なるほど。では今後も、今の時代に合わせて、というよりかは中長期的な視点で考えていくのですね。


上妻:そうですね。もともと今回の開発をスタートしたのも、コロナ以前の話でしたし、抗菌機能も備えていることもあって、時代にマッチしているという状況はとてもポジティブに捉えていますが、これで終わりというよりかは、これがスタートだと思っています。

現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品も、ありません。我々も色々なものを検討する中で、結果として安心安全な抗菌機能のある精油を取り入れようと決めました。
目には見えなくても香りなら体感できますし、コミュニケーションのきっかけになるはずです。


「ポジティブになる=免疫力を高める」に繋がると考えています。
我々は学者や研究者ではないですが、そういった分野の専門家の知識や経験を拝借し、「香り」を人間の感性からの視点だけではなく、科学的に検証し、新しい価値を追求しながら、香りの力でポジティブになれる空間づくりを提供していくことに繋がればと思っています。

ScENTIMENTALSのサービスは、空間ブランディングが大前提ですが、時代のトレンドや需要に沿いながら香りでコニュニケーション力を高めていくことができれば嬉しいですね。
期間に合わせた3つのプランを用意しており、お試しプランでは最短3ヶ月から利用可能。
香りが演出する空間づくりを楽しんでみては。

センティメンタルズ オフィシャルサイト:http://scentimentals.jp/

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