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COLUMN

【Nose parisに学ぶ】
アニック グタールの調香師、イザベル・ドワイヤンと“香り”

2017.07.10

Scentpedia編集部

以前紹介したパリのフレグランスコンセプトショップ「Nose」のウェブサイトでは、日本ではなかなか出会えない、現地で活躍する調香師を沢山取り上げている。これらの情報を共有すべく、今回、日本でも人気の「プチシェリー」で有名な、アニック グタールで現在調香師を務める、イザベル・ドワイヤンのインタビューの一部をご紹介。

モットーは、「ENJOY」


芸術家らしい一言から始まる彼女のトーク。そして意外にも彼女の一番最初の香りの思い出は、ほとんど味覚にも近い、サフランのシロップ。歯茎の痛みに耐えられない時に、母親が歯茎に塗ってくれたのだそう。決して母親が使っていた香水の...というものではないのが面白い。

彼女のメンターとなっているのは、アルゼンチン出身の作家で詩人、小説家であるJorge Luis Borges(ホルヘ・ルイス・ボルヘス)。60代に彼は完全に視力を失い、口述筆記をしていた。

本人はフレグランスは色々持っているけど、鼻を正確に保つために、つけないことも多く、寝る直前につけて、次の日の残香性を確認したりすることが多いそう。フランスの調香師って勝手なイメージでは、仕事の際もつけていそうなものながら、実際、なにもつけていないことがほとんどなのだ。

そんな彼女が、パリ郊外にあるイジプカという調香を学ぶ学校で生徒達に教えていることは、謙虚さ、自らを高めるためにスポンジのように吸収し、柔軟でいること、あらゆるものの美しさや文学に触れること。物事の核に触れられるまで、途中で諦めないこと。本人も、尊敬する小説家、ホルヘ・ルイス・ボルヘス意外をメンターとは言えないと語るほど、文学に触れることをとても大切にしているのが伺える。
絵や、音楽、アートの世界と結びつけられることも多いが、文字から得る彼女ならではの品やかさを生み出しているのであろう。

彼女の調香オルガン

彼女の得意な香りは、ローズエッセンス、エストラゴン、ガルバナム、ブラックカラント、ヘディオン、エバニール。彼女がアニック・グタールで手掛けたフレグランスは、Le muguet(すずらん)、La violette(スミレ)、Le Jasmin(ジャスミン)などのシングルフローラルの香りも得意としていながら、メンズやユニセックスと彼女が手掛ける香りの幅はとても広い。

イザベル自身のシグネチャーとなる香りは?と問われると、私にはわからないから人に聞いた方がいいのでは、といいつつも、自分は、映画館やコンサート、劇場などでは、人を邪魔しない香りであることを、心がけている。と話す。

調香師らしく、自らと香りの距離の取り方、シングルフローラルを繊細に創り上げるバランス感覚の良さを持ちながら、他とは違った視点で香りを自分の世界に取り入れる彼女のクリエイションの姿勢が垣間見れた。

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