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【インタビュー】イッセイミヤケ「ロードゥ イッセイ」が25周年。ディレクターに訊く、新たな時代を築く香水となった成功の鍵。

2017.09.14

Scentpedia編集部

「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PARFUMS)」は、1992年に発表した初のフレグランス「ロードゥ イッセイ」が25周年を迎えた。会場には、25年の軌跡を辿るフレグランスの数々を展示し、10月に発売となるメンズの新作フレグランスを発表した。

  • 2010年限定発売「L’EAU D’ISSEY EDITION ETTORE SOTTSASS」
  • 2008年限定発売の「L’EAU D’ISSEY EDITION SHIRO KURAMATA」

「ロードゥ イッセイ」は、当時オリエンタルで官能的な香りに、装飾的な香水が主流であった香水業界に、シンプルで、純粋かつ明快で、前例のないものとして、新鮮な驚きをもたらした。調香を手掛けたのは、当時まだ若手であったジャック・キャバリエ。「ロードゥ イッセイ」での成功をきっかけに才能を開花させ、現在ではフランスを代表する調香師として世界的に名を馳せている。

今回の新作発表に伴い来日した、イッセイ ミヤケ パルファム インターナショナル マーケティング ディレクター、アニエス・サタン氏にインタビューにて、「ロードゥ イッセイ」成功の鍵についても伺うことができた。

マーケティング ディレクター アニエス・サタン氏
−まずは、25周年おめでとうございます。

アニエス・サタン氏(以下、アニエス):ありがとうございます。

−国内外問わずヒットし、時代を築いた香水になった「ロードゥ イッセイ」ですが、成功の鍵はどのようなところにあると思いますか。

アニエス:成功の鍵としては、他にはない「唯一のもの」であったということが大きいと思います。当時の香水の流れに全く逆らう形で、様々な面において大胆で革命的な大きい賭けに出ていました。香水というのはフランス文化の大きな一部ですので、それまでは脹よかな香りのオリエンタルノートが主流であったし、デザインとしても金を施したような装飾的な香水瓶が多かったのですが、装飾性を排除して、シンプルで純粋なものを創り上げました。「ロードゥ イッセイ(イッセイの水)」という名前にオリジナリティがあったこともそうですし、真なるクリエイションを追求した結果が、このような成功に繋がったと考えています。

−当時のそのような流れのなか、シンプルなデザインや純粋なものに対して、懸念を抱くことはなかったのですか?

アニエス:私自身はまだこのチームに入って10年なので、25年前のことはわからないこともあるのですが、香水というものは常に感動を届けるようなものであります。そうした中で、当初はたしかにシンプルすぎると感じた女性もいたかもしれません。でも一方でこのボトルを愛された方もいたわけです。この香水の良さがわかった方には、決してシンプルなものや、シンプルすぎるものだと捉えられるのではなく、むしろ純粋なボトルとして受け入れられたのではないかと思います。シンプルなものというのは、実現するのが一番難しいということもありますよね。この装飾面には、このボトルならではの存在理由があるのではないかと思います。

−当時アクアティックフローラルのフレグランス自体ほとんどなかったのでしょうか。

アニエス:実はもっと前に試みを持っていた方達もいました。香水には、コントラストというものがあって、そのコントラストのバランスをとることがとても重要になります。その全てを叶えたのが、この「ロードゥ イッセイ」となったのです。なので、香水の専門家やプロの方達からは特に、アクアティックフローラルと言えば「ロードゥイッセイ」が出発点だったと感じられる方が多いのではないでしょうか。

−新たなメンズフレグランスについて教えてください。今回の新作は、どのようなところからインスピレーションを得ているのでしょうか。

アニエス:イッセイミヤケにおいて、「自然」は最も美しく素晴らしいものであると考えています、2017年の今、新しく男性向けの「水」を解釈すれば、というところから考えを呼び起こしています。水というのは、男性の香水の中でも繰り返し出てくるテーマでありますが、軽やかなものが多くあります。私たちイッセイミヤケにとっては、もっと力に満ちた、存在感の持ったものであり、決して軽々しいものではありません。今回のイメージとなっているのは、長い時間をかけて海を渡る流木です。その流木から感じられる塩気、ミネラルや太陽を浴びた香りがイメージとなっています。ボトルは、水に削られて出来上がったガラスの破片や小石のようなデザインにしています。

−お勧めの使い方があれば、教えてください。

アニエス:男性であれば、シャワーを浴びたり、お風呂上がりのあと、リフレッシュの為にお洋服を着る前に香りを纏うのも良いですし、アクセサリー的に仕上げに纏うのも良いのではないのでしょうか。使う人の意見を聞いていると、日中でも、夜でも自分の中で分けていたり、自分の気分で決めるんだ、という方もいます。それぞれに違った使い方があっていいと思います。香水を飼い慣らすような感じで。

−日本のフレグランス業界は、フランスのように大きいものではありません。そんな中で香水をもっと日本でも楽しめるようなものにしていくには、どのようなことが必要だと思いますか。

アニエス:日本のみなさんは、美しい素材や、丁寧で細やかな技術においてとても敏感だと私は感じています。原材料のことや、香水の背景やストーリー、どのような原料を使って、どのような構成で成り立っているのか、というところを語りかけて伝えていくということが一つの手段なのではないでしょうか。
それから、ためらわずにやってみるということですね。日本に来ると、日本の若い方達の自由にお洋服を楽しむ感覚にはすごく刺激を受けます。同じように、香りも楽しんでもらえるといいですね。

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