香りの世界にある素材を再定義する「Re-Fragrance」
第一回に迎えた素材はフルーティーな香りが心地良いバラ、「ローズダーシー」。香料の中でも、バラは群を抜いて高価なものとして知られ、甘くフルーティーな香りを想像されるかもしれないが、香料となると「バラってこんな香り?」と感じることもあるほど個性が強く、人によってはあまり馴染めないこともあるほど。いわゆる「ローズ」の香水も、天然由来の香料を入れるだけではなく、調香師の腕によって、香りの成分を用いて本物のバラのような香りをつくりあげることで再現していることがほとんどである。
バラは嘘だ。渡せば女性は眩む。「なんて大切にしてくれるひとなのだろう。」そうも思わせる。でも全て、嘘。バラに気持ちはないし、バラは話さない。伝えるべき真実はどれも、渡すひとの心にしかない。
バラはもう、粋ではない。だれもが綺麗だと口にして、だれもがいい香りのイメージを持つ。でも、もうそれも古めかしい。情熱を伝えたい時、バラを渡す必要なんてない。バラにも意味があるなんて、そんなに酔えない。だれかが決めた、「バラを贈ると、」なんて話にのせられた適当な話。ジンクスも、花言葉もつまらないもの。
特別な花だって珍しい花だって、他にもたくさんある。大ぶりな花一本で愛情を示したっていいだろう。春のスズランの純粋無垢な香りも、人をやさしい気持ちにする。バラの花に手伝って貰う必要があるような情熱は、本当の情熱じゃない。バラは、きれいな飾りもの。
バラが一番美しいとされていた過去もある。香りもそう。しかしチュベローズやライラック、ロータスの香り、どれも違う魅力を持っている。高価なバラの精油が、高そうな香りを放っているという話は、だれかの意見をそっくりそのまま自分のものにしただけ。何が一番美しいのか、何が高貴な香りなのか、自分の心で決めたらいい。女性の気分を上げる香りは、バラかもしれないし、バラではないかもしれない。
flower & photograph by yosuke sugawara