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日本初の内服薬?日本最古の柑橘、「タチバナ」とは何か。

2023.04.21

Scentpedia編集部

柑橘系の香りは、私たちにとってとても身近な香りです。
日本では、香りづけとして「香酸柑橘」であるユズやカボス、ライムなどを使用して、料理に香りの彩を添えています。以前からこのコラムでお話ししている通り、「食」と「香り」には、深い関わりがあります。
今回は、そんな「柑橘」について、少し詳しくお話ししたいと思います。

日本での歴史で初めて柑橘が登場したのは、今からおよそ1200年前とされています。
「和柑橘」という単語を聞いたことはありますか?
和柑橘とは、江戸時代以前から日本各地で利用されていた柑橘類のことを表す単語です。と言われても、私たちの中で、江戸時代以前の柑橘は何か、知っている人は少ないと思います。
そこで、和柑橘の中の一つである、「橘(タチバナ)」を、ご紹介させて頂きます。

みなさんは、「橘(タチバナ)」を見たことあるでしょうか。
橘とは、春から梅雨があける初夏にかけて、白い星のような形の花をさかせ、その後みかんのような小さな実を実らせる、蜜柑(みかん)科の植物です。
「みかん」と耳にすると、甘いイメージを持ってしまいそうですが、タチバナは酸味が強いため、そのまま食べず、果汁を食酢やジュース、ジャムなどに加工して利用されることが多いです。

国内の野生種であるタチバナは、なんと約300種しかありません。
そういったことから、「幻の柑橘、タチバナ」と呼ばれています。タチバナは、ミカン類などの祖先とされていて、古くは日本の夏を代表する植物でした。現在は、高知県土佐市や、海岸沿いの山地や樹林内に細々と約200種ほど残っているそうで、そういった国内の野生種であるタチバナは、別名「ヤマトタチバナ」と呼ばれています。

そんなタチバナは、「日本でもっとも古く記録された内服薬」でもあります。常緑樹(落葉しない樹木)に実り、果実も太陽に向かって鈴なりとなった後に半年以上に落ちないことから「長寿」「不老不死」の象徴とされており、『古事記』や『日本書紀』には、タチバナと天皇家に関する伝説が記されています。
京都御所や皇室系神社の本殿にはその右側にタチバナ、左側にサクラが必ず植えられています。この様子を表した「右近の橘、左近の桜」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。

どうでしたか?今回のコラムでは今までとは違い、「柑橘」の中から日本の歴史にもまつわる「タチバナ」を抽出してご紹介しました。
1つの植物にフォーカスして掘り下げることにより、その植物の香りの歴史に触れられて、少しワクワクしませんでしたか?香り・香料の世界をいつもとは少し違った視点で見てみると、そこには知らなかった歴史や、物語が広がっていてとても新鮮ですよね。

みなさんも是非、お気に入りの香りがありましたら、その香りの原料のもとをたどり、調べてみてください。好きな香りをより詳しく掘り下げることによって、知らなかった歴史を知り、もっとその香りが好きになるかもしれませんね。

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