Fragrance web Magazine

|セントペディア

Scentpedia

COLUMN

EssenceN°6
シャネルの名香とアルデヒド

2017.06.22

Scentpedia編集部


1921年、エルネスト・ボーによって調香された数種の香水から、ココ・シャネルによって選ばれた5番の香り。
言わずと知れた名香といえば、シャネル「N°5」ではないでしょうか。
N°5の構成の中の一つとして、当時香水業界で注目を浴びることとなった合成香料が、「アルデヒド」です。

アルデヒドといっても、植物や果実のように普段の生活の中で現れないものなので、いまいちどういった香りなのか、わかりにくいですよね。

今日はその、N°5の登場によって、香水業界を一新させた「アルデヒド」について、お話したいと思います。

グラースの上質なジャスミンの香りやアイリス、ネロリを贅沢に使用し、気品のある花々の香りに、この「アルデヒド」がない限りは絶対にN°5にはならないのです。

調香師エルネスト・ボーが、アルデヒドを大胆に処方に加えたシャネルの「N°5」では、柑橘や少しメタリックなトーンが特徴のアルデヒドを使用しています。

アルデヒドという香りそのものは、脂肪臭と呼ばれ、脂っこく、鼻に残る特徴的なものです。人間からも出るアセトアルデヒドも、それの一種であり、どこか人の体臭を思わせ、官能的な香りとも言えるのです。アルデヒドは、脂肪族アルデヒド(R-CHO)と、芳香族アルデヒド(Ar-CHO)に分類され、香水のアルデヒドタイプと呼ばれるものは、脂肪族アルデヒドになります。

シトラス調のアルデヒド、ピーチアルデヒド、アイロンをかけたような香りのするものもあります。

それ単体だと、単純にいい香りというようなものではありませんが、このN°5のように、様々な香料と組み合わせ、香料そのものを使いこなすことで、特別な香りの香水になるのです。

ここまでEssenceでシベットについても触れてきましたが、決して「いい香り」のものばかりで香りが創られているわけではないということが、わかりますよね。

目に見えなくて奥深く、人に記憶として残していく、香りの世界は、神秘的なものです。

アルデヒドの香りが特徴的な香水がこちら。

ゲラン / ミツコ
アルデヒド C14のピーチの香りを使ったシプレー系のフレグランス。
ピーチの香りが甘く可愛らしいだけではなく、オークモスやアンバー、パチュリの存在によって、官能的で気品ある女性の香りを演出している。

エルメス / カレーシュ
エルメスから発売された、初の女性用フレグランス。
アイリス、ジャスミン、ローズの香りにアルデヒドが加わることで、上品な雰囲気を創り上げている。

関連記事