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COLUMN

ガスクロマトグラフィーと官能評価について

2023.07.12

Scentpedia編集部

みなさんは、「ガスクロマトグラフィー」という単語を聞いたことはありますか?
ほとんどの人は聞いたことがないと思います。
今回は、そんなガスクロマトグラフィーとは何なのか、併せて覚えてほしい用語と一緒にお話し致します。

ガスクロマトグラフィー(GC)とは、香料がどのような有機化合物からできているかを専用の機械を使い、原料の判別を行い、数値で表した際の化学的な表示のことです。

そして、ガスクロマトグラフィーと合わせて覚えておきたいのが、「官能評価」です。
官能評価とは、人の五感(視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚)に頼って物の特徴や、人の感覚そのものを測定する方法のことを言います。
具体的には、大勢の人に、一定の条件で与えられた試料を、見る・嗅ぐなどして設問に言葉や数字で答えてもらい、結果を統計的に解析し、人の嗅覚により実際に鼻で嗅いでみたフィーリングなどによる香りの評価のことです。

ガスクロマトグラフィーの機械では、合成香料にどのような成分が入っているか、試料を装置に導入し、成分ごとに溶出時間が異なることで各成分が分離して検出される、電磁波透過率などの波長のピーク(ピークとは香料の成分が検出された部分のことを言い、何も検出されない部分をベースラインと言います)を見ることで約90%程度判別することができます。

ただし、その中に天然香料が混じっていると、判別しにくくなってしまいます。
なぜなら、天然香料には細かい香料の成分が約200種類入っているため、分析するための波長のピークが狂ってしまうからです。

また、同じ香りを再現するために、ある香料をガスクロマトグラフィーにかけて原料を特定し、同様の配合を行なった場合でも、必ずしも同じ香りになるとは限りません。
詳しくは過去のコラム「天然香料・合成香料の安全性とは」で説明しております。

このような理由から、香水の開発を行う現場では、先ほどお話しした官能評価、つまりは人のセンスやフィーリングなどによって、香りの分析やプロデュースをおこなっていくことが多くなります。

だし、大手の香料メーカーなどは、香料をたくさん注文してもらえるような商品(芳香剤・洗剤・日用品などの量産品)を製造するため、これらは通常合成香料のみを使い天然香料を使わないため、ガスクロマトグラフィーでの分析が有効であり、効率的でもあります。

その場合、機械を使って香料の成分がほぼ判明していたとしても、機械で判別できない数%の成分が、実際の香りの印象をガラリと変えるほどに大きく影響していることがとても多く、やはり、確実に香りを同じものに統一させることは現状難しい。となります。

私たちが日々手にしている香り付きの量産品も、すべての商品が全く同じ香りにすることは、とても難しいことだという事実に驚きますね。
過去のコラムでもお話ししましたが、香りに関してはやはり、100%ロジカルに数値化することは難しいと言えるようです。
同じ香りを作り出すことが難しいからこそ、香りには奥深き魅力が存在しているのかもしれません。
今回のコラムでは、過去に紹介したお話を知っていると、より深く内容を理解しやすいと思いますので、是非合わせてチェックしてみてください。

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