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COLUMN

カストリウムとは何か

2023.04.20

Scentpedia編集部

みなさんは、カストリウムを知っていますか?
今回のコラムを含め、4つのコラムに分けて動物系香料についてお話ししましたが、段々と動物系香料について興味が出てきた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、そんな動物系香料最後の一つである「カストリウム(CASTOREUM)」についてお話します。

カストリウムとは、カナダ・ロシアの農場に生息している、ビーバーの香のう(オスメス問わず)です。詳しくお話しすると、ビーバーの肛門近くの香のうの黄褐色のクリーム状の分泌物を乾燥させたものです。匂いとしては、レザーの匂いがします。そして、前回紹介したシベットの代わりに使われることが多いです。

前回はジャコウネコ、今回はビーバーから採取される香のう。何か感じることはありませんか?
多分、昔の人が「食」を開拓しようとした時に、生物を分解していく。その中で「香り」というものが、派生して出来てきているのだろうな。と私は感じました。

香りの世界では「レザーっぽい香り」という表現をされることが多いですが、では、どのような香りなのか。
一番わかりやすいのは、自宅などにライダースがある方は、嗅いでもらうと独特な香りがすると思います。そういう香りを「レザーっぽいかおり」と表現されています。

実際のカストリウムからは、レザーぽい香りがするのはもちろん、すごく苦い風邪薬のような要素もあります。そして、糞便のような要素もあります。前回のコラムでお話ししたシベットは、糞便臭100%、カストリウムは乾燥させて作り出すので、糞便感はシベットよりも弱い。その代わりにすごく苦いお薬、正露丸のような香りが入ってくるようなニオイです。少しスモーキーな香りが混ざっているのもカストリウムの特徴の一つです。

シベットの殴り込みにくるような破壊力と比べると、カストリウムのほうがまだ、糞便臭や臭みは弱いです。それでいうとカストリウムは、もう一度嗅いでみたいと思う方もいると思います。
動物系香料で断トツで臭いのは、シベット。
シベット > カストリウム > ムスク > アンバー の順で匂いが強い(臭みが強い)と考えて頂ければ、伝わりやすいかと思います。

では、動物系香料はどのように使用されているのでしょうか。
例えば、グレープフルーツのシンプルな香りにざっくりいうと、100対1や、100対2くらいの割合でシベットや、カストリウムを入れると香りの奥行きだったり、グレープフルーツの香りがより良くなっていく。

良い香りに一滴垂らした時、劇薬のような効果をもたらす異臭。すごくバランスがとれている香りに、その異臭を垂らした時、すべてを台無しにしてしまうものもあるし、ただ時としてその異臭が、良い香りを稀にとてつもなく良い香りに引き上げてくれることがある。
これを知ったうえで、シベットやカストリウムを嗅ぐと、なぜこんなに臭いのか、意味合いがわかってくると思います。そういったものは、食文化とも行き来しながら、すごく「爽やかな物」に「アニマルのもの」を加えることで、妖艶でセクシカルな表現をしていく。そういう考え方や、人間の1つの開発の仕方の礎になっているのだろうと考えます。

どうでしたか?動物系香料についてはこの記事で最後になります。
臭い香りが混ざることで、良い香りがさらに良い香りになる..香りの世界には不思議なことが多いです。それを紐解いていったとき、また新たな香りを作り出せたり、自分の新たな好きな香りに出会うキッカケになるのかもしれません。

みなさんも是非、色々な香りを試してみてください。
その先には、新たな自分の香りの世界が広がっているかもしれませんね。

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